企業内診断士活性化研究会 報告日:平成13年4月11日 第65回研究会資料 報告者:佐藤晋治 (補足説明)IT革命と中小製造業−その光と影― 1. 一大変革 産業史の視点から 「しかし情報産業という言葉の生みの親である梅棹忠夫氏は、人類の産業史を農業の時代、工業の時代、 情報産業の時代と3段階に分ける。 工業の時代の次にくる発展段階として情報産業の時代を位置付けるのである」情報産業論−西村 技術革新の視点から 1) 文字の発明 @情報を世代を越えて伝達・記憶する手段を獲得 2) 印刷術の発明 @ 情報(アナログ)を安価大量に生産 3) ワットの蒸気機関の発明 @ 動力・エネルギーを安価に生産 4) インターネット開発 @ 情報(ディジタル)を安価大量に生産・伝達 2. 地球規模でお互いに関係しあう道具 @ インターネットは地球規模のコンピュータシステムである ・ インターネットはLANが相互に結合し地球規模でネットワークを組んだものであり、地球規模の分散型 コンピュータシステムといえる。 次ページのインターネット概念図参照 ・ 端末に向かった人間は、ネットワークにより各地にある情報を居ながらにして集めることができる。 ・ 安価で使い勝手の良いOS、記憶装置の普及により、一人一人が莫大な情報を分析・活用できるように なった。 ・ ネットワークにより地球規模の遠隔操作が可能になった(なる) ・ 一連の操作手順を記憶させることにより必要に応じて、人が介在しなくても容易に繰り返し作業ができる A ユビキタス ・ ユビキタス(Ubiqitous)とは、「いつでも、どこでも」と言った意味のラテン語である。よって「ユビキタス・ コンピューティング」とは,いつでも、どこでも、コンピュータの支援が得られるような電脳環境を意味する。 筑波大 北川高継氏 ・ユビキタス社会とは情報化がすすみいつでもどこでも誰とでも情報交換が容易にできる社会を指す。 3. IT革命の定義(定義ではないが知恵蔵2000年版の説明によると) 情報化社会を象徴する言葉、情報化社会とは情報が物質やエネルギーと同等あるいはそれ以上に重要な 資源となり,その価値を中心に社会・経済が発展していく社会を云う。日本の情報化は、1970年代から進め られてきたが,その背景には集積回路や光ファイバーなどの基本技術開発に支えられたエレクトロニクス・ 通信技術の急速な発展があった。 さらに90年代になるとPCの機能が高度化し,LANのようなネットワーク接続により,より複雑で高度な作業に 使われるようになった。 米国で軍需用に研究・開発されたインターネットが民間に解放されたことで情報化は加速する。「平和の配 当」の一例であろうが,特に90年代半ばからはインターネットが急速に全世界に広がり,瞬間に双方向の 大量の情報交換が可能となった。 しかも携帯電話の発達・浸透で情報交換はいかなる所でも行えるようになった。 これらの情報技術の進歩は情報伝達に劇的な変化をもたらし,産業界をはじめ地球規模での社会を大きく 変えつつあることから,18世紀の産業革命にならい、情報技術(IT)革命と呼ぶ。 別の解説(3月25日 日経 「21世紀ビジネスコミュニケーションシンポジューム 全面広告 宮崎緑」) 日本ではIT革命のITは「インフォメーションテクノロジ−」。情報技術を意味します。技術のところで止まっ ているのですね。 実はこの先の「インダストリアル・トランスフォーメーション」。即ち、産業構造の転換。欧米ではこちらのほうに 重点が置かれています。この情報技術の革命的な転換によって社会構造や人間関係,価値観がどう変わっ て行くかと言うそちらのほうが今重要と思います。 4. C&Cの発達 @ コンピュータと通信の融合 NECの故小林宏治氏は、1977年,米アトランタでのINTELCOM77で通信とコンピュータとの融合を提唱し、 「C&Cの発展」として今日の姿を予見した。 次ページ図表 C&Cの発展,C&Cの大衆化を参照 ・ コンピュータ・・・・読み,書き,話し,計算し,記憶し、繰り返し実行する ・ 通信・・・・いつでも,どこでも,誰とでも情報を伝達する ・ この両者が融合した世界はどのようなものか? 5. PCの高機能化 @ 10年前のメインフレームとPCの比較(機能とコスト) A パソコンの高性能化,低価格化(2000年中小企業白書) 6. OSの発達 WindowsはPC用に開発されたOSであって,タスク管理,メモリ管理,ユーザインターフェース,グラフィックス 機能,ファイル管理機能があり、アイコンにより容易に操作することができる。 また、ネットワーク機能によりインターネットへのアクセスが容易にできる。 周辺装置の増設が容易である。 つまり グラフィック処理ができるインターフェースにより人間味のある会話が成り立つようになった。 しかし、まだかなり付き合いがたい面がある 7. ネットワークの発達 ・大型汎用機による集中処理→多数の小型コンピュータによる現場での処理(ダウンサイジング)→構内通信 網による分散処理(LAN) ・ データ通信の発達(個別的な規約→OSI) ・ VANの発達(汎用VAN、業界VAN,地域VAN,企業グループVAN) ネットワークの効用について「電話機の場合を考えてみよう.電話機を一人で持っていても何の役にも立た ない.最低限,電話機を持っている人がもう一人はいないと,電話機では話が出来ない.一般に電話機を 持っている人の数がn人になると,通話チャンネルの数はn(n-1)/2となる。nが少し大きなるとnの2乗に比例 すると言ってよい。 電話機を持つ効用は,大雑把にいって通話機のチャンネル数に比例すると云ってよいであろう。」 (情報産業論 西村吉雄氏) 図表 メトカーフの法則の市場への応用 8. インターネットの発達 ・ 1958年米国防総省半自動防空システム(SAGE)→1964年アメリカンエアライン社の座席予約システム(SABRE)→1970年代米国防総省計算機ネットワークの実験(ARPA)ネットワーク→学術ネットワーク→ 商用利用 (コンピュータシステムの基礎 ITECから) 9. 半導体及び光デバイスの発達 図表 集積度の向上、図表DRAMの価格下降曲線、図表 光ファイバ−の高速性 10. 景気変動に機敏に対応 日本経済新聞 2月23日記事から 「IT関連企業に定着しつつあった輸出増→生産増→企業収益増→投資増という図式に,にわかな変調と いう要素が加わり,経営者心理は迷路に入った感がある。 最も「翌日修正することもある」と策定前から朝令暮改を自ら口にする裏には,IT化で高速化した経済に振り 切られまいという決意も読み取られる。 [IT革命のパラドックス]に対する恐れがある。グリーンスパン米連邦準備理事会議長が13日に行った議会 証言で「米経済は昨年末に失速状態になった」と発言。 IT革命は生産性を向上させ米景気拡大に寄与したが,景気後退時には減速のピッチを早める方向に作用 する二面性に言及した。 高度に情報化された社会では,景気減速時に企業や消費者の心理の悪化を増幅し,強いブレーキ役にも なる」 11垂直統合のタテ型と自立分散のヨコ型 垂直統合(材料・部品から最終製品まで,研究開発から販売まで)したピラミッド型大企業が,全ての活動を 排他的に進める。中略・・・ある製品を製造する会社が,その製品に必要な材料や部品などまで自社で供給 することを垂直統合という。こういう企業が大きな役割を果たす産業構造を本書では「タテ」型と呼ぶことに する。・・・中略・・・これに対して,材料会社,部品会社,組立会社などが独立して存在していて,それらの連携 作業によって同じ製品を作り上げる方式が考えられる。「もちはもち屋」と考え、自社の仕事は得意分野だけ に絞込み,他はよそにまかせる,というやり方である。 自立した集団の水平な連携が主体となるこの産業構造を「ヨコ」方と呼ぼう。 このヨコ型では,会社は小さくても不利は少ない。 (出典 情報産業論 西村吉雄 放送大学客員教授) 12 アトム型産業とビット型産業(注9) 13 モノからサービスへのながれ H11年中小企業白書参照 14 国のIT基本戦略 ・ 一年以内に全ての国民が極めて安価にインターネットに常時接続可能に ・ 5年以内に3000万世帯が高速インターネット網に,1000万世帯が超高速インターネット網に常時接続 可能な環境を整備 ・ 2003年度に電子政府を実現(自宅やオフィスからインターネットで届出などの手続きが可能) ・ IT関連の修士,博士号取得者を増加させ,国・大学・民間における高度なIT技術者・研究者を確保 15 小林電子 次ページ参照 16 インターネットによる遠隔制御の進展 17 Ipv6 次次ページ参照 15.小林電子の事例 業界ぐるみのIT化戦略 小林電子産業 大田区中小製造業の活性化 1) PCの導入から業務課題を指摘できネットワークの構築し一貫したソリューションの提供すること 2) 個々の企業の連鎖を強化する(ネットワーク化する) 3) 今後のシステムの傾向 自らシステムを持つ49%,アウトソーシングする40%、併用11% 4) 大田区6787社のうち従業員が10名未満の会社が三分の二ある。これらの企業主は、今はファックスで 注文を受けている。PC導入の意義についてアンケート取ったら「PCなんてとんでもない」 5) 飛翔/生産ASPは技術情報管理、成果物管理、生産管理、MRP、ワークフローをWEB上で行える 6) 飛翔のコンセプトは如何に早く、消費者・顧客のニーズに合った製品開発生産できるかにある。 ・顧客の抱える問題をモノ作り設計へ反映・過去の技術情報を再利用・設計しながらモノ作り、変更しながら モノ作り・LTの短縮 7) 各社とも自社の生産管理システムがあった。これを不要なものとした。 各社を統合した総合生産管理システムを提供する 8) IT化の課題は @ 5万円で各企業にシステムを提供する。この5万円の価値が理解されない。 A 業務フローとシステムが一致しない。これをクリアしないと真のITかは実現しない 16.インターネットによる遠隔制御の進展(ネットワーク・ロボティクス) 注19 定義)標準通信プロトコルと標準ヒューマンインタフェースをインフラストラクチャーとして、これらと 実世界観測操作技術であるロボティクスを融合させることにより、「いつでもどこでも誰でも」使える遠隔観測 操作システムを実現する.これをネットワークロボティクスと呼ぶ。 応用例)@.独居老人の日々の安否確認 A 子供の居場所確認 B 外出先からWEBを通して自分の家の様子をチェック、器具を操作する C 親孝行揉み器 D 移動ロボットにカメラをつけてWEBを遠隔操作してショッピングを行う E 自動車の自動運転(GPS、WEB、運転ロボット) 18 中小製造業のIT化の現状 F 00年中小企業白書から(次ページから参照) ・ パソコン導入企業割合 ・ 市販業務用パッケージソフトの導入状況 ・ CAD/CAMの導入企業割合 ・ CAD/CAMの利用と一人当たり売上高 ・ 情報化推進に当たり不足している人材 ・ インターネットを利用する企業間ネットワーク導入割合 G H11年中小企業白書から(ページから参照) ・ コンピュータネットワークの使用目的 ・ コンピュータネットワークの発展により生まれる新しいビジネスへ参入する際の問題点 H パソコンを扱える人材について(ページ参照) 19 中小製造業のIT活用事例 20 中堅・大企業製造業のIT活用事例 21 中小製造業のIT化の現状とあるべき姿 参考文献 1.情報産業論 西村吉雄放送大学客員教授 NHK放送大学講座 2.手に取るようにインターねとがわかる本(NTTメディアスコープ編) 3.中小LAN/WAN教科書(笠野英松著、アスキー出版局) 4.図解でわかるサーバの全て(小泉修著、日本実業出版社) 5.インターネット時代のコンピュータリテラシー(水谷正大著、共立出版) 6.知恵蔵2000年版の説明の抜粋と一部加筆 7.「C&Cとソフトウエア」小林宏治 サイマル出版 8.2000年通信白書 9.覇者の未来 デビッドC モシェラ著佐々木浩二訳 IDGコミュニケーションズ 10.コンピュータシステムの基礎 ITEC 11.H12版通信白書 12.2000年の半導体産業 志村幸雄著 日本能率協会マネージメントセンタ− 13.H10年中小企業白書 14.H11年中小企業白書 15.2000年中小企業白書 16.インターネット各種HP情報 17.日本経済新聞、日経産業新聞、日刊工業新聞の各種記事 18.2001年中小企業ITフェア 「中小企業のIT活用事例」 19.計測と制御 2001年1月号 電子技術総合研究所 比留川 博久